2019年4月にプレビュー版がリリースされた、mockmock DataRecorderを使ってみて、IoT PoCを担当する者としてグッときたポイントをご紹介します!


■mockmock DataRecorderとは

mockmockは、クラウド上に仮想デバイスを作成し、開発中のサーバーに疑似データを届けられるサービスです。

これまでは、
 ・データの階層構造や、値の型・生成方法などをコンソール上で入力するだけで、簡単に疑似データを設定することができる。
 ・仮想デバイスは、瞬時に動作や台数を変更できる。
 ・欲しいデータを、欲しいタイミングで、欲しい量だけ受け取ることができる。
という特徴がありました。

さらに、新たにリリースされたDataRecorderでは、人工的に作成した疑似データではなく、実際のデバイスから収集されるリアルなデータを用いて仮想デバイスを生成することができます。

1. mockmock DataRecorderを使えば、IoT PoCのよくある困った!を解決できるのでは?

1-1. IoT PoCでよくある困った!ポイント

PoCを実施する中では、次のような課題が発生することが多くあります。
私自身、IoT担当エンジニアとして、以下のような点を毎度自分で作成・加工するのに時間を取られています。。。

  • センサー/エッジデバイスの選定から始めると、分析までたどり着くまで時間がかかる
  • データを蓄積するのに、時間がかかる。
  • PoCの期間内に、想定する異常(部品の消耗など)が発生するとは限らない
  • データの取得間隔やデータ量、送信頻度など、パラメータを変更するのが大変
  • PoCで実施した数台での試行だけでは、最終的な可視化や分析の効果まで予測できない

1-2. mockmock DataRecorderを利用することで、IoT開発の「困った」を解決!

1-1. のような課題に対し、mockmock DataRecorderを利用すれば、データ収集や実データを基にした想定される異常波形を作成・加工する部分を簡単にできる!


  • 実際に測定したデータをmockmock DataRecorderに登録することで、疑似波形ではなく実際のデータをもとに、パラメータの試行錯誤ができる。
  • 通信方式が決定していなくても、csvファイルからmockmock DataRecorderに登録することができる。
  • 実際のデータをベースに波形加工をできるため、想定される異常波形など作りこむことができる。
  • 実際のデータをベースに仮想デバイスの台数を増やすことができるため、対象機器の種類や台数が増えた場合のシステム全体を想定できる。

2. mockmock DataRecorderを利用して実際のデータから想定される異常データを作成してみる

2-1. mockmock DataRecorderにデータを登録する

まずは、mockmock DataRecorderに実際のデータを登録します。
そのためには、
 ①mockmock DataRecorderにMQTTSでデータを送信する
 ②csvファイルをアップロードする
という二つの方法があります。
詳しくは、mockmockのドキュメントをご覧ください。

実際のデータを登録することで、仮想デバイスから送るデータを疑似データではなく実際のデータをそのまま利用することができるようになります。

2-2. 実際のデータをもとに、異常波形をつくりこむ

mockmockに登録した実際のデータを基に、異常波形をつくりこんでみましょう。
mockmock DataRecorderには、データ変換タイプとして以下の4種類が用意されています。

  • 無変換(コピー)
  • ノイズを付与する
  • ピーク値を付与する
  • データを間引く

今回は、「ピーク値を付与する」を利用して、異常データを作りこんでみました。

もともとの波形に対し、データの途中からピーク値をのっけることで想定外の振動が発生した状態を模擬します。
元データに対し、「どのデータ位置から、どのようなピーク値を、どれくらいの点数分、どれくらいの間隔をあけて」付与するかをJsonでパラメータ定義してあげます。

これだけで、もともとのデータに対し、ピーク値を付与することができます。
今回は、以下のように波形を変化させました。
mockmock DataRecorderにはデータ可視化機能も付いており、登録/変形させたデータをすぐに可視化して確かめることができます!

2-3. Torrentioへのデータ送信

今回、データ分析部分は当社Torrentioを利用しています。
mockmockからTorrentioにデータを送るための設定は簡単です。
mockmockのデータ送信先設定にTorrentioのMQTTエンドポイント設定を記入するだけ。

mockmockから送信するデータのリプレイヤー定義にて、2-1. で登録したDataRecorderのデータセットを選択します。

mockグループ設定にて、上で定義したデータリプレイヤーを利用するよう設定し、TorrentioのTopic名、MQTTクライアントIDを設定して準備完了。

あとは好きな台数の仮想デバイス(mock)を作成し、起動するだけ!
今回は、もともと1台から収集したデータを3台に増幅して送っています。

2-4. 異常検知してみる

mockmockから送信されたデータをTorrentioで異常検知してみます。

PoCとしてセンサーによりデータを測定しているのは1台ですが、mockmockにより実データを送信できる仮想デバイスを増やすことで、複数台で実施した場合の分析の見え方なども検討することができます。

※ここでは異常検知を実施しましたが、Torrentioでは、他にもIoTダッシュボードでのリアルタイム可視化やルールエンジンによる制御なども実施することができます。
詳しくは、Torrentio Cloudについてをご覧ください。

3. まとめ

小さく始めることで、実施しようとしているIoTシステム開発が有効かどうかを見極めるためのPoC(実証実験)ですが、IoTシステムにはセンサー/ネットワーク/分析プラットフォームなど必要なステップが多く試行錯誤に時間がかかることや、監視対象の機器台数がスケールした場合の想定が難しいなどの課題がありました。
mockmock DataRecorderを利用することにより、「測定した実際のデータをもとに」仮想デバイスの台数を増やせたり、異常波形を創りこむことができます。
PoCでの試行錯誤がぐんとやりやすくなりますね!